美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

双方の父が旧友だったのを理由にお見合いの席で出会ったこと、当初は恋愛感情ではなく互いのメリットのために結婚をしようとしていたことまで、晴臣は包み隠さずに話した。

叔父一家からの不当な扱いについては萌から伝えていなかったため、その部分に話が及ぶと田辺は顔をしかめて聞いている。

「萌ちゃんが、社長一家からそんな扱いを……」
「打算で女性に結婚を申し込むなど非常識だと理解しています。でも見合いの席での秋月家の歪さを見て、この方法なら彼らから救えると思ったんです。そして一緒に過ごすうちに、いつしか私は彼女に想いを寄せるようになりました。萌を愛しているからこそ、結婚したいと思ったんです」

ちらりと隣を盗み見る。萌への想いを口にする晴臣の横顔は胸が熱くなるほど真剣で、息を呑むほど美しい。

自分たちの経緯の説明を聞くのは少し恥ずかしいけれど、お世話になったからこそきちんと説明すべきだと思って話しているのがわかるため、すぐに視線を逸らして目を伏せた。その様子を理恵がにこにこしながら見守っているのが、なおさら照れくさい。

しかし会社の不正に気づいた萌が告発を決意し、晴臣に迷惑をかけまいとひとり東京を離れたのだと彼が続けると、理恵はハンカチで涙を押さえながら「本当に大変だったのね」と萌の気持ちに寄り添い労ってくれた。

「そのあとのことは、おふたりが知っての通りです。私が不甲斐ないせいで彼女にはとても大変な思いをさせてしまいましたが、田辺社長や奥様のおかげで、ここまで光莉と陽太を育てられたと聞いています。本当にありがとうございました」

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