美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

晴臣が感謝を述べる横で、萌も一緒に頭を下げた。その胸元には再び四つ葉のネックレスが輝いている。

「十年ぶりに会った私を受け入れてくださって、本当に感謝しています。私ひとりだったら、とてもあの子たちを育てられませんでした」

双子の妊娠が発覚し、相手の男性に連絡を取った方がいいのではと助言をくれたにもかかわらず、萌は頑なにそうしなかった。それでも彼らは萌を責めず、相手を詮索することもなく、ただ親身になって助けてくれた。両親を亡くした萌にとって、田辺と理恵が第二の親のような存在だ。

「ふたりとも、頭を上げて」
「そうよ、そんなにかしこまらなくていいんだから」

田辺は穏やかにそう言うと「秋月には本当に世話になったんだよ」と昔を懐かしむように目を細めた。

大学を卒業後、一度は大手の製鉄会社に就職した田辺は、あまりのブラック企業ぶりに体調を崩して退職した。その後、なかなか転職先が見つからず焦っているところに声をかけてきたのが、萌の父だったらしい。

「『ものづくりの根幹を支える会社を一緒につくらないか』って誘われたんだ。熱い男で、仕事に一切の妥協がない。一緒に開発したねじの特許を取って、会社をどんどん大きくしていった。仕事が楽しいと感じたのは、あの時が初めてだったよ」

田辺から語られる父や会社の話は、まさに萌の記憶にある秋月工業そのものだ。

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