美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

「秋月と奥さんが亡くなったあと数年は今の社長のもとで働いたけど、あの人は金儲けしか考えていなかった。古株の俺たちの進言もことごとく無視されて、結局耐えきれずに出てきたのを、秋月に申し訳ないと思ってたんだ」
「そんなこと……」
「だから彼がなによりも大切にしていた萌ちゃんのことは、ずっと気掛かりだった。大変だったのに気づいてあげられなくて申し訳ない。僕を頼ってくれて本当によかったよ」

田辺の横で、理恵も大きく頷いている。

「ありがとうございます。たくさん助けていただいて、本当にどうやってお礼をしたらいいのか」
「やぁね。いつも言ってるでしょう? 私たちは萌ちゃんやあの子たちと過ごすのが楽しいのよ。本当の娘みたいに思っているんだから」

いつものようにカラッとした笑顔の理恵が、「それで?」と話の続きを促してきた。

「ふたり揃って挨拶に来たってことは、そういうことなのかしら? 主人から萌ちゃんを追いかけてきたイケメン副社長の話を聞いて、ずっと気になってたのよ」

まるで続きの気になるドラマを見ているかのようなワクワクした表情に、緊張していた萌の身体から少し力が抜ける。

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