始まりは愛のない契約でしたが、パパになった御曹司の愛に双子ごと捕まりました
(結婚……?)
目の前の晴臣はからかっているわけでも冗談を言っている風でもなく、至極真面目な顔をしている。だからこそ意味がわからない。
「ふたりきりだし、堅苦しい話し方をやめても?」
「ど、どうぞ」
萌が頷くと、晴臣は「ありがとう」と微笑みを浮かべる。その柔らかい表情は誰もが惹き込まれるほど魅力的で、萌は頬が熱くなるのを感じた。
「こんなことを言うのは失礼だけど、俺はこの見合いで結婚を決める気はなかったんだ。相手がどうというより、これから仕事が忙しくなるからタイミングが悪くてね。でも早く結婚して安心させてほしいという父の気持ちもわかる。だからいずれは父の選んだ女性と結婚するのに異存はないんだ」
萌はただ黙って彼の言葉を聞いていた。大企業の御曹司にとって、結婚は自分の意思でするものではないらしい。
わかりきっていたはずなのに、彼の口から直接『この見合いで結婚を決める気はなかった』と言われると、なぜか傷ついたように胸がちくりと痛む。