美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
「よし。ふたりとも、お花をここに置くよ」
今日は萌にとって、そして晴臣にとっても特別な日だ。今日のために必死で仕事を調整して休みをもぎ取った。
午前中は近くの公園で遊び、萌お手製のお昼ご飯を食べたあと、都内の緑豊かな地区にある霊園へやって来た。
「ふたりのじいじとばあばが、ここで眠ってるんだよ」
萌は途中に寄った花屋で購入した仏花を花立てに挿した。彼女の真似をして墓石の前でしゃがむ双子が、小さな手を合わせている。
「じいじ、ばあば?」
「ねんね?」
まだふたりには難しそうだったが、萌は「そうだよ」と頷いた。
「ご挨拶しようね。きっと、ふたりをずっと待っててくれたはずだから」
四月三十日。今日は萌の両親の命日だ。十一年前の今日、彼女の両親は事故で帰らぬ人となった。
まだ中学生だったひとり娘を残して逝く無念は、双子の父となって日の浅い晴臣にも痛いほど理解できる。
三人の後ろに立ち、晴臣も目を閉じて手を合わせた。