始まりは愛のない契約でしたが、パパになった御曹司の愛に双子ごと捕まりました
飢えている。女性にではなく、萌に。
広い客室を見渡しながら、このゴールデンウィークに休みをとりたいと調整を頼んだ時の小倉との会話を思い出す。
『足繁く名古屋まで通った甲斐があったんですね。おめでとうございます』
『……小倉さん、茶化してますよね?』
『嫌ですね、副社長。半分は本気で祝福してますよ。もちろん休暇は調整させていただきます。お子様と過ごす時間は、なににも代えがたいですから』
もう半分はなんなのだというツッコミは面倒なので入れないことにした。
小倉には小学校に上がったばかりの娘がいるらしく、名古屋に行く際にはレンタカーを借りておくべきだと助言をくれたのも、ベビーガードやキッズチェアなど必要そうなものを教えてくれたのも彼だった。
『それに、奥様とも三年ぶりの再会なんですよね? この休日で存分にイチャついて英気を養ってきてください。連休明けはレセプションパーティーも控えていますので、馬車馬のごとく働いていただきますから』
『イチャついてって……子どもも一緒なんですから』
『だからなんなんですか。子どもは子ども、妻は妻です。もちろん昼間は全力で父親ですけど、夜は妻を愛するただの男でいいんですよ』
おちゃらけて見えても、小倉はいい父親であり愛妻家らしい。