始まりは愛のない契約でしたが、パパになった御曹司の愛に双子ごと捕まりました
10.過去を越えて幸せに
初夏の陽気が漂う五月下旬。萌は田辺ネジを退職し、晴臣のマンションへと引っ越した。
以前は「おみしゃん」と呼んでしまい、そのたびに照れくさそうに「……パパ」と言い直すことの多かった陽太だが、今ではすっかり「パパ」呼びが定着している。
光莉は引っ越しの日が近づくにつれてナーバスになり心配していたが、その理由はどうやら康平にあったらしい。
引っ越し当日、見送りに来てくれた田辺と理恵、そして康平に萌が挨拶を済ませると、光莉は一目散に康平の元に走っていった。
『ひかり、おっきくなったら、こーくんのおよめしゃん、なりゅ!』
涙目でそう宣言した光莉に、そばで聞いていた理恵は相好を崩した。
『あらあら。萌ちゃんをお嫁に出して寂しくなっていたけど、いずれ光莉ちゃんがうちに来てくれるのかしら』
『おー。いい女になれよ、光莉』
おかしそうに笑う康平に頭を撫でられて、光莉は嬉しそうにしている。その光景を微笑ましく見守る田辺や萌とは裏腹に、晴臣だけはしかめっ面をしていたのだった。
その後、改めて晴臣の両親にも挨拶を終え、萌と晴臣は婚姻届を提出した。