始まりは愛のない契約でしたが、パパになった御曹司の愛に双子ごと捕まりました
そんなことが何人も続き、ある日、その事実の裏には玲香の存在があったと知った。萌と仲よくしているのを理由に、友人たちは玲香や彼女の取り巻きから嫌がらせを受けていたのだ。
そうして離れていった友人たちを責められず、萌は誰かを頼ることもできないまま、家でも学校でも孤立していった。
大好きだった両親を亡くし、仲のよかった友人を失い、萌は生きる意味を見出だせないまま大人になった。
萌の人生から徐々に色がなくなり、虐げられながらも惰性的に叔父の家で暮らし続けている。
「もしも君が結婚に対して夢を抱いていて、相思相愛でないと結婚したくないというのなら、今の話は忘れてくれ。君の夢を否定したいわけでも潰したいわけでもない。でもそうじゃないのなら、考えてみてほしい。君にとっても悪い話ではないと思う」
打算で結婚をするなど考えたこともないため困惑が大きいが、今の環境から抜け出せるまたとないチャンスであることは間違いない。
それは長年思考を放棄してきた萌にもわかった。
(あの家から、出られる……)
呼吸が浅くなり、緊張したように鼓動がドクドクと鳴り響いている。指先を握りしめていないと、全身が大きく震えてしまいそうだ。
萌は無意識にすがるような視線で晴臣を見た。
これまですべてを諦めたような色をしていた萌の瞳に、一筋の希望が宿る。晴臣はそれを見逃しはしなかった。