美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
エピローグ

三月下旬、うららかな春の日。教会の中庭では桜が満開を迎え、ふたりの門出を祝福している。

萌と晴臣がこの日に選んだのは、ヨーロッパの教会から譲り受けたステンドグラスや椅子など、雰囲気のある挙式ができると人気の独立型教会だ。

花嫁の萌が身につけているのは上品なハリと光沢の美しいミカドシルクでつくられた純白のウェディングドレス。バーサーカラーという肩から上腕を覆う大きなケープ状の襟が特徴的なAラインのドレスは、正面から見るとシンプルだがバックスタイルはフリルがふんだんにあしらわれている。

オーダーメイドのドレスは花嫁を美しく引き立て、ヘアメイクも相まって普段の自分とはまるで別人のようだと萌は思った。

「本当に綺麗だねぇ。きっと秋月も奥さんも、天国で喜んでるよ」

感慨深く頷いて腕を貸してくれたのは、結婚式に参列するために名古屋から駆けつけてくれた田辺だ。萌の亡き父に代わり入場の際のエスコート役をお願いすると、快く引き受けてくれた。

「ありがとうございます。私、たくさん恩返ししますね」

萌ができる一番の恩返し。それは幸せになることだと彼は言ってくれた。そっと腕に手を添えると、田辺は笑みを零す。

「そうだね。期待しているよ」

目の前の重厚な扉が式場スタッフによってゆっくりと押し開かれる。

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