美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

金曜日でも疲れ知らずの双子は早く遊びたくて仕方がないようで、一目散に玄関ホールへ向かっていく。

萌は出迎えてくれた保育士に挨拶をしてふたり分の荷物を渡すと、靴箱で外靴から内履きに履き替えているふたりに「陽太、光莉、いってらっしゃい」と手を振った。

「ママも、いったっしゃー」

双子らしくぴったりと声を揃えて返事をするふたりの可愛さに微笑み、萌は今来た道を引き返す。

萌の勤める『田辺ネジ製作所』は、自宅と保育園の中間にある。従業員数二十名ほどの小さな会社だが、社長の人柄と才覚で業績は右肩上がりの優良企業。

萌はそこで経理などの事務として働きながら、大切な宝物である双子を育てるシングルマザーだ。

事務所に出勤すると、社長の田辺から早速頼まれ事をされた。

「萌ちゃん、おはよう。悪いんだけどお昼までに茶菓子を買ってきてくれるかな? 用意するのをすっかり忘れてしまってね」
「おはようございます。もちろんいいですけど、珍しいですね。お客様が見えるんですか?」
「そうなんだよ。まさかうちまで足を運んでくれるとは思わなかったから戸惑ってるんだけど、話だけでも聞こうと思ってね。じゃあよろしく。アポは十四時の予定だから」
「わかりました」

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