美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

自分たちが苦しい生活を強いられているのは陽一から援助を断られたせいだと思い込み、陽一だけでなく彼の妻や娘の萌までも逆恨みしている。

そんな翔子の言葉を聞いて育ったため、玲香はさらに萌を憎むようになった。

両親の葬儀の場で『ほらね、薄情な人間にはバチがあたるのよ!』と言い放った翔子と玲香の勝ち誇った笑顔は、今も脳裏にこびりついている。

それなのに中学生だった萌を引き取ったのは、会社の株式や資産などの遺産が目当てだった。

そして立場が逆転した今、翔子と玲香は当時の憤りをぶつけるがごとく萌にキツく当たっているのだ。

「図々しいのは両親譲りね。あんたの両親も、私たちが困っていようと手を貸してくれなかった。私たちが桐生家に玲香を嫁がせたいと知っていながら出し抜こうと考えたの? 育ててやった恩も忘れて……恥を知りなさい!」
「そうよ! 親なしの居候の分際で彼に取り入ろうとするなんて、地味女のくせに最低!」

玲香はシューズボックスの上に飾られている額縁に入った絵を手に取り、萌に向かって投げつけた。

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