美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

(私は、どうしたい……?)

今のまま、あの家で翔子や玲香に虐げられながら一生を終えるのか。本当にそれでいいのか。

育ててもらった恩義はたしかにある。けれど理不尽に傷つけられ続ける理由など、どこにもないはずだ。

晴臣の問いに対し、浮かぶ答えはひとつだけしかない。

「わ、私は……あの家から出たい」

切実な願いを口にした声は細く震えていた。

ぎゅっと目を閉じて自分の思いを打ち明けた萌の頭に、ぽんとあたたかい手のひらが置かれる。

「よく言った」

おそるおそる目を開くと、優しい微笑みをたたえた晴臣が萌を見つめていた。

< 38 / 268 >

この作品をシェア

pagetop