美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

萌は鏡から目を逸らして髪を解いた。ブリーチ剤でダメージを負った髪はゴワゴワで手触りが悪く、手櫛で梳くだけで傷んだ髪がプチプチと切れる。萌はきゅっと唇を引き結び、服を脱いでそそくさとバスルームに入った。

晴臣の言っていた通り、浴槽にはたっぷりのお湯が張られている。けれど、ゆっくり浸かって優雅なバスタイムを過ごすほど心のゆとりはない。

豪華なバスルームに感嘆する間もなく急いでメイクを落とした。脛の傷が思った以上に染みて痛かったが、シャワーで手早く身体を洗う。

ふかふかのタオルで水気を拭き、彼に借りた部屋着に袖を通して髪を乾かした。

長袖のTシャツは指が出ないほど袖が長く、ハーフパンツはウエストが緩い。この格好で出ていくのは心もとないが、他にどうしようもない。

意を決して足を踏み入れたリビングは三十畳はあろうかという広さで、ベージュとグリーンをベースカラーにした落ち着いた大人の部屋といった雰囲気だ。

奥の対面式キッチンに立っていた晴臣は萌に気づくと少し驚いた顔をした。

「早かったね。ちゃんとあったまった?」
「はい、あの、お風呂ありがとうございました」

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