美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

担当する美容師から、元の黒髪に戻すか、せっかくなので違う髪色にするかを聞かれ、萌は「チョコレートみたいな色にできますか?」と尋ねた。

自分でもなぜそうしたいと思ったのかはわからない。けれど、昨夜晴臣が淹れてくれた優しくあたたかいホットチョコレートのまろやかな色味が脳裏に浮かんだのだ。

鏡を見るのも躊躇われるほど酷かった髪をチョコレートブラウンという落ち着いた艶のある色に染め直し、トリートメントをして、ついでだからとフルメイクまで施してもらった。

鏡の中にはこれまでとは別人のような萌が映っていて、思わず手で髪に触れると昨日のゴワゴワしたダメージヘアが嘘のようにサラサラになっている。

「うん、いい色になったね」

スタッフに呼ばれて部屋に入ってきた晴臣は満足そうに頷き、「よし、じゃあ次に行こうか」と萌を促す。

「あ、でも、お会計は」
「もう済んでるから気にしないで。ほら、行くよ」

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