美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
普段着ているものといえば、ファストファッション店で売っている服の中でも安い商品ばかりで、それすらセール時に購入している。
当然選り好みできる状況ではなく、ただ安くて清潔で季節に合えばいい。そんな有り様だ。
このブランドのような高級店で服を選んだところで、萌にはワンピースどころかトップス一枚さえ買えはしない。
困惑する萌をよそに、晴臣は手近にあるラックから数着の服を手に取った。
「俺は萌にはこういう感じの服も似合うと思うんだけど」
「あっあの、私、そんなお金は」
「心配しなくていい。これから生活するのに必要なものを買うんだ、萌に出させるわけないだろう」
「でも、さっきの美容院代も出してもらって……私なんかのために、そんな」
「ストップ」
低く強い口調で話を遮られ、萌はびくっと身体を竦ませて口を噤んだ。
普段は穏やかで優しい眼差しを向ける晴臣だが、今は口を引き結び眉をひそめている。
「昨日も言おうと思ったんだ。萌、自分を『私なんか』と卑下するのはやめるんだ。君は本心からそう思っているのかもしれないけど、聞いている側を不愉快にする」
「あ……」
「俺は君に結婚を申し込んで、君はそれを了承した。いわば俺たちは婚約者だ。その君が『私なんか』と卑屈になっているのは、俺としては気分がよくない」