美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
萌はまったくの恋愛未経験で、子作りに関しては保健体育程度の知識しかないが、それも努力するべきうちのひとつだろう。
恥ずかしいからといって彼の提案を拒否するべきではないと、萌は真面目な顔で頷いた。
「晴臣さんが、ご迷惑じゃないのなら」
「萌の気持ちは?」
確認するように顔を覗き込まれ、たったそれだけの仕草でも恥ずかしくて顔が赤くなる。
(たしかに今のままじゃ、いつまで経っても距離を縮められない……)
彼と同じベッドで眠るなんて緊張するし、キスどころか手を繋いだこともないのに夫婦の営みをするとなると、少しの恐怖心もある。
(でも晴臣さんとなら、大丈夫な気がする……)
そう結論付けた萌は、膝の上でぎゅっとこぶしを握りしめた。
「恥ずかしいし緊張しますけど、頑張りたいです」
正直に、誠実に、きちんと自分の意見を伝えようと、萌は耳まで真っ赤に染めながら真っすぐに晴臣を見つめ返す。
すると晴臣は驚いたように目を見張り、すぐに視線を逸らすと「……今のはずるいだろ」と呟いた。しかし、その小さすぎる声は萌には届かない。
買い物を再開し、萌の自室に置く家具などを一式購入した。最後に彼のお気に入りだというパティスリーでチョコレートフィナンシェを買って帰宅する頃には、すでに日が傾き始めていた。
それに気付かないほど充実した一日を過ごしたのは、両親を亡くしてからはじめてだった。