美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
叔父の家で生活していた頃も料理自体は嫌いではなかったが、しなくてはならない義務でもあった。
けれど今は晴臣に喜んでほしいと思い、彼のために料理をする。それは萌が考えていた以上に楽しくて、喜んでもらえれば自分自身も嬉しくなるのだ。
萌が自然と顔を綻ばせてそう伝えると、晴臣は驚いたように目を見開いた。
「晴臣さん?」
彼の反応に首をかしげると、晴臣はひとつ咳払いをして「なんでもないよ」と、いつもの表情に戻った。
「ごちそうさま。そういえば、例の買い物はできた?」
綺麗な所作で食事を終えた晴臣から尋ねられる。
「あ、それなんですが……晴臣さん、まだお腹に余裕はありますか?」
晴臣から出された、とあるミッション。それは〝自分の好きなものを買ってくる〟というものだった。
先日、晴臣からクレジットカードを受け取った萌だが、これまで持っていなかったためカード払いに慣れていないのと、やはりすべてを晴臣のお金に頼っているのが申し訳なくて、食材の買い物の際は自分の財布から支払っていた。