美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

「君が秋月工業に入社しなかったのは正しい判断だったと思うよ。名前が残っているとはいえ、人が変われば会社も変わる。固執する必要はない」
「そうでしょうか」
「それに、ご両親はあのまま君が彼らと一緒に生活していた方が辛いと思う。誰だって大切な人には幸せでいてほしいはずだ」

だから、と晴臣はポケットから小さな箱を取り出した。

「あえてここで渡すよ。萌、誕生日おめでとう」

柔らかな微笑みとともに誕生日を祝われ、萌は驚きに固まった。

「どうして……」

両親の命日が萌の誕生日だなんて伝えてはいない。萌にとって四月三十日は悲しみのどん底に突き落とされた日で、あの日以来、とても自分の誕生日を祝う気になんてなれなかった。

けれど、彼は『あえてここで渡す』と言った。

疑問に思って晴臣を見上げると、彼は「身上書は個人情報の宝庫だからね」と冗談めかして笑い、濃紺の箱を上にゆっくりと押し開ける。中からネックレスを取り出すと、萌の背後に回った。

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