美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く

一瞬ふたりの間に気まずい空気が流れたが、それを打破したのは晴臣のいつもの穏やかな笑顔だった。

「ご両親に結婚の挨拶をしてもいい?」
「は、はい。ありがとうございます。きっとビックリすると思います」

大学時代の後輩であり最大の取引相手であった桐生自動車社長の息子と自分の娘が結婚するなど、思ってもみなかった未来に違いない。

それもただあの家から逃げたいからという理由で、愛のない結婚を。

そう考えるとなんだか急に両親に申し訳ない気持ちになり、胸の奥がチクリと痛んだ。

ふと晴臣に視線を向けると、彼は墓前に膝をつき、両手を合わせて静かに目を閉じている。まるでここに眠っている萌の両親に、結婚の許しを請うているように見えた。

(普通とは違う結婚だけど心配しないでね。今までよりも、ずっとずっと幸せだから)

こうして一緒にお墓参りに来て挨拶をしてくれる優しい晴臣が相手だからこそ、打算に満ちた結婚の提案にも頷けたのだ。

『せっかくこういう縁があったんだから利用すればいい。もちろん俺にも君と結婚することでメリットがあるんだからお互い様だ』

優しさはあっても、そこに愛情は欠片もない。

晴臣の言葉を思い出し、胸に鈍い痛みが走るのに気付かないふりをしたまま、萌も両親の墓にそっと手を合わせた。






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