美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛し抜く
3.天国と地獄

お見合いから二ヶ月が経った。

晴臣との同居生活は順調で、これまでの生活を思えば、こんなにも幸せでいいのかと不安になるほど満ち足りた時間だった。

朝目覚め、隣でぐっすり眠る晴臣の美しい寝顔を眺めてからそっとベッドを抜け出し、ふたり分の朝食を作る時。週に三日は美味しいスイーツを萌の分まで買ってくる彼が「萌へのお土産って口実があるから、いっぱい買える」と得意げな顔をするのを見た時。萌は今までにない胸の高鳴りを感じた。

なによりも萌の心を浮き立たせるのは、晴臣の萌に対する態度に甘さを感じるようになったことだ。

思い違いでなければ、両親の命日に誕生日を祝ってもらって以降、それを顕著に感じる気がする。

萌の作った料理に毎回「美味しい」と感想をくれたり、休日には時間を作ってふたりで出かけたり、晴臣は〝メリットのある結婚〟を提案してきたとは思えないほど心を尽くしてくれている。朝の忙しい時間でも、会話やスキンシップなどのコミュニケーションを疎かにしない。

大事にして、甘やかされている。そう自惚れたくなるほど、彼は優しかった。

「今日の夕飯、なにかリクエストはありますか?」
「萌の料理はなんでも美味しいから迷うな。でも作る側は〝なんでもいい〟は困るんだっけ。じゃあ、ハンバーグが食べたい」
「ハンバーグですか?」

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