始まりは愛のない契約でしたが、パパになった御曹司の愛に双子ごと捕まりました
秋月工業は陽一が興した会社で、強度の高いネジなど締結部分の部品の製造、販売を行っている。
中でも陽一が友人とともに開発して特許を取得したというネジはこれまでにないほどの軽量化に成功し、車の製造部品として桐生自動車へ卸しているため、秋月工業にとってとても重要な取引先相手だ。
陽一から健二へ経営が移って早十年。業績が右肩下がりの今、桐生自動車への売上が命綱でもある。
その大企業の社長直々に見合いの打診を受け、現秋月工業社長の健二が断るはずがない。
「あらぁ! では晴臣さんは近いうちに取締役に就任されますのね」
「えっ、その若さで? すごーい!」
場違いなほど甲高い声が個室内に響いた。健二の妻で萌の叔母である翔子と、その娘の玲香だ。
翔子はひと目で高級ブランドだとわかるロゴの入ったワンピースを着用し、玲香は真っ赤な振袖姿。
なにも事情を知らない人が見れば、桐生自動車の御曹司と見合いをしているのは玲香だと思うだろう。