痛い痛い、恋をした。
「もう、いいと思ったの」

『な、にが…?』

「貴方に振り回されるのは、ごめんなのよ」

『…は…?』

「本当は面と向かって言おうと思ったけれど、貴方との"次"はない」

『それは、どういう……』

「まだ察せられないの?本当に貴方は自分勝手で馬鹿な人。終わりだと言ってるのよ」

『いや、そんな…』

「ほら…今貴方の後ろで、喜びを噛み締めているコと末永くお幸せに。今までありがとう?さようなら」


ピッ

引き留めれるような声を聞く間もなく、通話を切った。
そして、彼に関する全ての情報をすぐさま抹消する。
スラスラと喉元から出てきた言葉は、きっと私の最後の強がりだったかもしれない。


…そう。
一度は愛した人だから。 

愛した、人だから。
区切りをつけた。
…はっきりと。

あのまま、もしも直面しながらいたら、言葉は軽くなって相手に届いてしまっていたかもしれない。
けれど…。
彼の背面で微かに揺れた、私とは違う"影"がスっと私を現実へと引き戻したのだ。


もう、涙が渇いた心に沁みることはない。
こんなちっぽけなことで、悩んだりする時間はやっては来ないだろう…。


24時間…やっぱり、愛は保たなかった。


別に、セフレから始まったわけでもないのに、あの人は何時までも…無邪気で真綿で私の心を締めていくように、雁字搦めに縛って離さなかったけれど。


その呪縛から漸く解き放たれたのだ。


もう…自由になって、自分の為に生きることを選んでいこう。


徐にピアスのキャッチに触れ、そっとそれを外す。
緩んだピアスホールに風が通った気がした。


「こっちの方が用なしになったわね…」


呟いて、私は無意識にそのタンザナイトのピアスを握り締めていた。

それから…数秒。

バッグの中へと無造作に投げ込んで、歩み出すことにする。
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