前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
そして、あと数ヶ月で5年目を迎えようとする、12月に入った頃。
3つのオフィスの統合が決まり、私のオフィスは移転することが決まった。
祖父母に話をして、移転先の近くで1人暮らしをする話をしていたけど、
「星部さん。実は、統合する事で、管理部門の事務員は、全員、何処かの部署で、補助として勤めることに決まったんだ」
と、チームリーダーの掛井(かけい 30歳)さんから、説明を受けた。
「他の部署…」
「僕の力不足で申し訳ない…僕も異動になるんだ。同じ部署に配属されるように頼むから、一緒に頑張らないか?僕は…」
掛井さんは、次に言いかけた言葉を呑んで、
「僕が力になる。僕が支えるから…優秀な君なら、きっと大丈夫だよ。来週、答えを聞かせて欲しい」
そう打診された。
どうしよう…
信頼ある掛井さんと、コンサルの仕事をしながら、スキルアップをするか…
それとも、違う会社で、管理業務を極めるか…
家に帰り、早速、祖父母に事情を話した。
いつも私を、温かく見守ってくれた祖父母。
就職した時も、凄く喜んでくれたけど…
「これは、綾奈ちゃんに違う人生を歩みなさいという事だから、気を落とさずにね」
「そうだぞ。私達がいるんだ。自分が進みたい道を信じて、突き進みなさい。転職の道を選んでも、綾奈に合う会社が、きっと見つかるさ」
2人は、私の話を聞くと、残念がる事もせず、にっこりと答えてくれた。
「うん、ありがとう」
何か行動しようとする時、前向きに考えることが出来るのは、小さい頃、微かに覚えている両親の笑顔。そして、育ててくれた2人の温かさ。