前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
【元上司との再会と今上司の嫉妬】
宇河HDは、4月から新事業年度が始まる。
バックオフィス部門は、開示、株主総会に向けて、忙しい日々だ。

前職でも、決算の時期は、忙しかったなぁ…
どんなに忙しくても、丁寧に指導してくれた掛井さん。
掛井さん、どうしてるんだろう…
今の私を見たら…
まさか、宇河HDの社長秘書をしてるなんて、きっと、驚くよ…

「星部さん、新しい会計士と税理士が受付に到着したら、案内してくれるかな?」
「はい、大会議室ですね?」
「あぁ。監査法人と税理士法人同士で、引き継ぎの打ち合わせをするからね。頼むよ」
社長は、書類を持って、部屋を出て行った。

海外拠点が増えてきた昨今、より世界に拠点を持つ法人へ、変えざるを得なかったらしい。
その時、受付から到着の連絡が入った。

大会議室のエレベータ前で待っていると、貫禄ある人達が降りて来た。
「社長秘書の星部です。お待ちしておりました。ご案内致します」

大会議室に案内すると、既に社長、役員他、各部長が座っている。
名刺交換が始まり、ザワつき始めた時、
「もしかして…星部さん?」
声を掛けてきたのは、掛井さんだった。

「掛井さん!どうしてここに?」
「やっぱり、管理業務がしたくてね。知人の伝手で、転職したんだ。星部さんは?」
「社長秘書なんです」
「凄いよ!また、後で会えるかな?」
「はい、会議が終わったら、声が掛かるのでその時に」
掛井さんの肩越しに、名刺交換している社長が見えた。

こっちを…見てる?
笑顔で名刺交換をしているけど、一瞬、刺さる目線とぶつかったような…
「じゃあ、また後で」
「は、はい」
私は、そのまま部屋を出て、秘書室に戻った。
大切な会議の前なのにって、気に障ったかも…
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