前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
秘書室に戻り、社長に頼まれた書類を纏めていると、経理部長から会議終了の連絡が入って、片付けを手伝うために、大会議室に向かった。

社長はまだ、話をしている。
掛井さんは私を見つけると、近づいて来た。
「元気そうで安心したよ。連絡したかったけど…気兼ねしてね。でも、こんな形で会えるなんて嬉しいよ」
掛井さんの笑顔…今の仕事が合っているのか、活き活きとしている。
「秘書の仕事は、経験が無いから不安で…」
「真面目に取り組む星部さんなら、大丈夫だよ」

会議室を出ると、掛井さんは周りを気にして、
「もう部下じゃ無いし、連絡先教えるから、食事でもしようよ」
「えっ?」
「辞める時は、忙しくて話が出来なかったけど、ここで会うなんて何かの縁だ。ちょっと待って」
名刺の裏に携帯番号を書いて、渡された。
「待ってるから」
真剣な目つきの後、微笑んだ掛井さんは、会議室を出て、経理部長と話をし始めた。

「知り合い?」
いつの間にか隣にいた、社長と目が合う。
目が…怒ってる?
「はい。元上司なんです」
「元上司との再会か…彼から、告白された?」
「こ、告白なんてされてないです!元上司として気に掛けてくれて」
「…今度会わない?とか誘われなかった?」
「ど、どうして分かるんですか?」
「彼を見たら分かるよ。星部さん、動揺してるね。右手の名刺の裏には、電話番号を渡されたってとこかな?」
社長は、鋭い視線で、談笑している掛井さんの背中を見つめた後、私を見つめた。
ズバリ当てられた事に、ビックリしたのと、どうしてか後ろめたい気持ちになった。
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