前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ

「当たっただろ？」
社長は真剣な顔つきで、詰め寄るように私に近づいて、体をかがめ、
「俺の秘書として、仕事を優先して欲しいんだが」
と耳元で囁いた。
「も、もちろんです。社長秘書ですから…」
「まぁ、プライベートは自由だが…」

そして、体を戻すと、ため息をつきながら、
「俺の秘書に、悪い虫がつくのは困るんだよね」
と独り言のように呟いて、ゆっくりと歩き出した。

悪い虫って…掛井さんのこと？
掛井さんが私のこと、そんな風に思うわけないのに…

あっ、そうか…
私、宇河HDを背負う社長の秘書なんだから、行動や言動には気を付けないと。

変な噂がたったり、誤解を招くことがあれば、社長に恥をかかせるだけじゃ無く、会社の名誉を傷つける事になりかねない。迷惑を掛けないようにしないと。

「社長、これからは気を付けます」
私は社長の後を追いかけ、大きな背中に向かって、声を掛けた。
社長は足を止めて、振り向くこと無く、
「あぁ、俺の心の平穏のために頼むよ」
小さな声で返事をして、そのまま歩き出した。

軽率な行動に、怒ってる…
たった2日目で、社長を怒らせるなんて…
反省しながら、早歩きで追いつき、後ろからそっと横顔を見ると、私に気付いて、優しく微笑んでいた。

また…ズルい…
その笑顔はズル過ぎます。

恋愛経験の無い私が、こんなに素敵な男性の傍にいると、普通の恋愛出来るのかな…
社長と比べたら、きっと太刀打ち出来る人なんていない。
そして何よりも…
今の私には、社長以外の人は、目に入らない。