前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
本人に直接言うなんて、恥ずかしくて下を向いていると、ソファから立ち上がった社長が、近づいてきた。
「でも、変わらないね。俺への色。尊敬…か」
「えっ?」
「どうしたら、君の色が変わるんだろうね」
「あの…どういう意味でしょうか?」

目の前に近づいた社長に、熱く揺れるような目で見つめられて、身動きが出来ない。
「必ず変えてみせるよ。監査室に行ってくる」
社長はそのままドアを開けて、出て行った。

しばらく呆然として、ようやく我に返って社長の顔を思い出すと、胸の鼓動が騒がしく、リズミカルに弾む。
ただ、普通に会話してるのに、社長の破壊力あり過ぎる、大人の男性の魅力…
社長に会ってから、初めての感情ばかりで、戸惑う。

色?何だろう…覚悟って…何を?
もしかして、セレブだけが分かる言葉、とか…
はぁ…もっと、人とのコミュニケーション力を付けないと…
もっと勉強して、胸を張って、社長秘書って言えるように…
ドキドキしている場合じゃ無い!

6月に入り、人事部長に書類を持って行こうとした時、掛井さんが前から歩いて来た。
「掛井さん、いらっしゃってたんですね?」
「監査の様子を勉強したい、っていう口実でね」
「では、私はこれで」
頭を下げて、横を通り過ぎようとした時、腕を掴まれた。
「今晩、食事しない?なかなか電話くれないし」
「あ、えっと…色々と事情がありまして」
掛井さんは、何かノートに走り書きして破ると、
「今日、ここで待ってるから」
と、私が抱えてる書類の上に置き、足早に去って行った。

行動を慎重にしないといけないのは、分かってる。
でも、相手は掛井さんだし…
社長は、不思議とその人を見るだけで、どんな人か分かる。
きっと、掛井さんが悪い人じゃないってことも。
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