前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
「そろそろ、私の大切な秘書を、家に帰していただけますか?」
横から誰かに、腕を掴まれて引っ張られたかと思ったら、肩を抱き寄せられた。
「しゃ、社長!?打ち合わせのはずじゃ…」
社長は私の問いには答えず、真っ直ぐ掛井さんの方を見ていた。

「宇河社長…」
「掛井さんには大変お世話になったと、星部さんから聞いています」
「余裕が無くて、星部さんの意見を尊重しましたが、何か方法があったんじゃないかと、ずっと後悔してました。」
「優秀な部下…だけじゃなかったって事は、貴方を見た時から分かってましたよ」
「分かっているなら、2人にさせて下さい。決して、社長にご迷惑をお掛けするようなことは、ありませんから」
「迷惑…とかの問題じゃないですが…星部さん、ちょっと待ってて。掛井さん、少しいいですか?」

2人は私から離れて、静かに会話をすると、しばらくして戻って来た。

「星部さん、もう少し、あそこのカフェに行って話をしない?」
掛井さんが、駅の近くのカフェを指差した。

「じゃあ、俺は帰るよ、星部さん」
社長は、背を向けて歩き出した。

もう掛井さんとは、たくさん話をしたし、辞める時に言えなかった事を聞いても、私はもう、今の毎日で精一杯だし…
それに、今は少しでも社長の傍にいたい。

「社長!待って下さい!私も帰ります」
私は、社長の背中に向かって声を掛けた後、
「掛井さん、私、これで失礼します」
笑顔で挨拶した。
「星部さん…」
「お話がゆっくり出来て良かったです。新しい場所でお互い頑張りましょう。では失礼します」
私は社長に遅れをとらないように、頭を下げて、急いで社長の隣に駆け寄った。
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