前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
社長は、さっきまでとは違う、凄く穏やかに微笑んでいる。
「楽しかった?」
「楽しかったのは、楽しかったですが…」
ずっと社長のこと考えてました、とは言えないよね…
「前の会社では、毎日、処理に終われていただけだったなって。今みたいに社長の傍で、経営の話を聞いて、ワクワクしたことなんてありませんでした」
「会議での俺を見ても、怖くない?」
「冷静に話が出来る社長を、尊敬しています。厳しいことも言わなければいけないですし」
「嬉しいねぇ…そんな風に見てくれていると」
「皆さん、だからついて来られると思います。社長は仕事のミスでは、叱ったりしません。叱っている時は、誤魔化そうとしたり、人や会社を大切にしない時とか…それから…」
「そんなに叱っているつもりはないけど?」
「す、すみません!あっ、でも掛井さんも、とても素敵な上司でした。私を一から指導してくれた人なので」
「そう…それは嫉妬するね」

嫉妬って言葉、好きな人だけじゃなく、部下にも使うんだ。
違う意味なら嬉しいのに…

「あの、今は社長の部下ですから」
「期待してるよ」
社長の車でマンションに戻り、部屋の前に着いた。

鍵、鍵…あれっ、鍵が…あっ!
「社長…鍵を会社に忘れて来ました」
「…急いで帰るほど、掛井さんに会いたかったのか?」
「ち、違います!あの時は、社長が」
「俺が、どうした?」
「社長が…突き放すようなこというから…」

はっ!私、つい余計なことを…
「すみません、コンシェルジュの所に行って来ます」
「俺の部屋に来るか?」

何気なく言った社長の言葉に、私はのぼせ上がって、身動きが取れず、言葉が出ない。
ドキドキして、息をしているのか分からない。
親切心で言ってくれてる社長の言葉に、私、こんな気持ちを抱いちゃダメ…
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