前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
【社長にお預けなんてしてませんが…】
「社長、遅くなりました」
昼から出勤して、社長室に入ると、椅子に座っている北斗さんが、優しく微笑みながら近づいてきた。
「体は大丈夫か?」
「はい。でも、北斗さんの方が疲れてます…よね…」
昨日のことを想像しながら、自分が発した言葉に、急に恥ずかしくなった。

「一応、あれでも抑えたつもりだけど?今日は、俺が疲れるほど、愛していいか?」
「はい、あっ、いえ…」
「まぁ、綾奈に選択権は無いから、安心しろ」
「あの…安心の使い方が…」

私が狼狽える姿を見て、イタズラに笑う北斗さんが、
「綾奈、今から来客があるんだ」
と言い終わると、ドアロックを開け、「どうぞ」と言うと、スラッと背が高く、20代後半くらいの整った顔つきの男性が、入って来た。

「ご無沙汰しています、北斗さん。こちらが…もしかして」
「秘書の星部さんだ。星部さん、こちらは霞条 忠(かじょう ただし 27歳)君だ。海外にも進出している、大手飲食企業、霞(かすみ)グループの副社長だよ。家同士が、古くからの知り合いなんだ」
「初めまして、秘書の星部です」
「初めまして」
「では、私は失礼します」
一礼して秘書室のドアを閉めようとすると、
「北斗さんが秘書を採用したって聞いたから、ビックリしてどんな方かと思いましたが…貴女なら心配はいりませんね、安心しましたよ」

言われたことが理解出来ずに、私が戸惑っていると、
「星部さん、後で声を掛けるから、頼んでいた資料を進めてくれないか?」
笑顔なのに、怒りを含む声で、北斗さんが言葉を発した。
「はい、では霞条様、失礼致します」
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