前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
【深まる愛に忍び寄る女性の影】
「綾奈、今週末は大手企業が参画する経済フォーラムがあるんだ。一緒に参加してもらうよ。服装は普段通りで構わない」
「私、どう振る舞えばいいですか?失礼なことが無いようにしないと」
「俺の近くにいてくれたらいい。1度に揃って会える人達じゃ無いからね。楽しむといいよ」

社長秘書として、北斗さんに恥ずかしい思いをさせないようにしないと。
会場に着くと、緊張感が増すばかりの中、北斗さんの後から、部屋に入った。

「久しぶりだね、北斗君。いや、失礼。今では宇河HDを動かす社長だね」
「近藤社長。ご無沙汰しております」
会長と同年代くらいの、白髪で品のある雰囲気と、凜とした立ち振る舞いに、圧倒される。

「会長がヨーロッパで手掛けた、日本文化を広めるための施設や専門学校が、大好評らしいね。どこまで大きくなるんだ、君の会社は。羨ましいよ」
「近藤社長には敵いません。今度はロスに、舞台やコンサートが出来るような、大型施設を建設するとお聞きしましたよ」
「あぁ、日本のエンタメの素晴らしさを、多くの人に目を留めて欲しい。これからは、そういうことにも力を入れたくてね」
「父と同じですね」
「皆に支えられたから、ここまで来れた。元気なうちに、次世代のために、色々とお返しをしたいんだよ」
「近藤社長を、父が尊敬するのが分かります」
「それは私もだよ。ライバルでもあり、いい仲間だ」
「父が聞いたら喜びますよ」
「ところで、君の後ろにお淑やかに立っている女性は?」
「星部ですね。私の秘書です」
「星部さん。大変な人の秘書になりましたね」
「えっ?は、はい。とても素晴らしい社長です」
「秘書を取らない北斗君が選んだ人だ。きっと優秀なんだろう。それと、とても目が澄んでいて、彼女の周りの空気も澄んでいる。見る目があるね、北斗君」
「恐れ入ります」
「では、私は失礼するよ。それと、相談したいことがあるんだ。近いうちに来てくれないか?」
「はい、来週予定が空いていますので、伺います」
「その時は星部さんもどうぞ。では、失礼します」
近藤社長は、とても穏やかな笑顔で、去って行った。
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