前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
そんな大役…それに…
社長秘書って、髪を綺麗に纏め、眼鏡をキュッと上げた仕草のキレキレ才色兼備の女性や、グラマーな体型で、モデルさんのように非の打ち所が無い、容姿端麗の女性のイメージだけど…

「大変光栄なお言葉ですが、私、秘書の経験はありません」
不安そうな私に、社長は、真剣な顔つきから優しく微笑み、
「君にお願いしたい。それに、君なら大丈夫だよ」
優しく語り掛ける声は、さっきとは違う。

初めて会ったのにどこか懐かしく、体中に駆け巡る得体の知れない感情に、直感的にこの人に仕えたいと思った。

それから話は進み、社長室を出る時、
「一緒に仕事が出来る日を、楽しみに待ってますよ」
と、優しく囁くような社長の声は、凄く心地良い。
何だろう、この感じ…
こんな風に、胸が締め付けられるような気持ち、初めて…

3月に有休消化を利用して、今日は、社長が提供してくれたマンションに引っ越しする。
「そろそろ行くね。今まで大切に育ててくれてありがとう」
「綾奈、1人で大丈夫か?」
「うん。仕事頑張って、恩返しするからね」
「私達は大丈夫だから。無理しないようにね、綾奈ちゃん」
「ありがとう。着いたら連絡するから!」

大好きな2人に見送られると、自然に涙が溢れた。
母方は、遙か昔、由緒ある家系だったと、聞いたことある。

両親のことは、あまり覚えていないけど、小さな私と写る公園での写真は、2人の愛が溢れている。
祖父母は温厚な人柄で、いつも私が寂しくないように支えてくれた。

未だ、男性と恋愛したことが無い私…
私にも、祖父やお父さんみたいな人が、いつか現れたらいいけど…
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