前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
「あの…燃えるような時間って」
「経済界の話が世界に及ぶと、議論というより、過激な発言が多くてね」
ため息をつく北斗さんは、信号で止まった時、私の頭を撫でた。
「論破されたのが、初めての経験だったらしい」
そして、私の目から流れ落ちた一筋の涙を、指で拭った後、前を向いて車を走らせた。

「そもそも、彼女は、自分の利益しか考えてない。自分の名誉とね。学生のためじゃない。邪な思いが溢れていた」
声が嫌悪感を含む。

「それが分かったから、彼女とは今後一切関わらないと、会長にも話をつけた」
「お2人の会話から…私はてっきり…」
「俺達の間に、体の関係があると勘違いした。それで、嫉妬した。そうだな?」
「北斗さんの過去を、責めてるわけじゃないです。でも…」
「でも、何だ?」
「想像すると…嫉妬で、胸が痛いくらい締めつけられて…」
「消せない過去があるのは確かだ。でも、俺が心奪われたのは、綾奈だけだ。初恋は綾奈なんだよ」
「北斗さん…」
「そんな寂しそうな顔をするな」
北斗さんは、会社とは逆方向へハンドルを切った。

「家に戻るよ」
「えっ?」
「綾奈を悲しませた。その償いと、今すぐ、証明するしかないだろ?どれだけ綾奈を愛しているか」
「でも、仕事が…」
「俺にとって、仕事より綾奈の方が大切なんだ。それほどに、君に心を奪われていることを証明する」

そして、家に着くなり、ベッドに連れて行かれ、北斗さんの深い愛情を体に刻み込まれる。
「北斗さん…もう十分に分かりましたから…」
「十分?まだ啼き足りないぞ。これでは、俺が納得いかない」
結局、会社に戻らず、夕食を食べたのは、いつもより遅い時間になった。
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