前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
人事部長か…
あれから、綾奈の力を買ってか、忙しい時は、俺に気を遣いながら、仕事の依頼をしてくる。
まぁ、仕事だから仕方ないが…
「浮気するなよ」
「しません!私が北斗さん以外を好きになるなんて、ありませんから!」
俺を想って、必死に訴える綾奈に、心が安らぐ。

キスしたいのに、もうすぐ忠君が来る。
「そんなに怒らなくても、知ってるよ」
「もぉ!やっぱり、意地悪です」
ふんっ!と、するような仕草が愛らしく、書類を持つ綾奈を後ろから抱きしめた。
「やっぱり、我慢出来ないね」
軽くキスをすると、拗ねていた顔が、色気立つ。
「行っておいで」
「…はい」
綾奈を見送ると、気持ちを切り替えた。

きっと、忠君はあの話だろう。
この間のパーティで見かけたが、気付かれないうちに、部屋を出た。
力を持った彼の事だ。
綾奈のことも感づいているだろう。

社長室のドアロックを開け、カメラでドア前に来たのが見えてから、「どうぞ」と声を掛けると、忠君が入って来た。

「急で申し訳ありません。近くに寄ったものですから」
「10分しか時間がないんだ。手短に頼むよ」
「もう、私の言いたいことは分かっている、というお顔してますね」
「それなら、もう、帰ってくれ。何度聞かれても、答えは変わらない。親同士も承知の上だ」
「えぇ、もちろん、北斗さんと景子との許婚契約が、破棄されているのは、承知の上です。でも、お聞きしたいのは、どうして、彼女なんですか?」
「聞いてどうする?答えは覆さない」
「妹の方が、遙かに貴方を理解出来ている。彼女は、北斗さんの本当の力を知っているのですか?」
「君に、言う必要は無いし、2人の間に踏み込むな」
「妹が北斗さんを諦められないみたいで、気持ちを伝えに来たんです。小さい頃から、貴方を支えるために、教養を身につけ、自分を磨き上げてきましたから」
「それは、霞条家の教育方針でしょ?俺の支えが何かを、君達が分かるはずも無い。これ以上の話は無駄みたいだ。アポイントがあるから、帰ってくれるか?」
< 55 / 112 >

この作品をシェア

pagetop