前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
秘書室に戻り、しばらくすると、受付から電話が入った。
「霞条様がお見えです」
あれっ?社長が出張の連絡は、したはずだけど…
「すみません、連絡不足でした。社長は今日から出張です」
「はい、そのお話は星部さんから聞いていますが…社長ではなく、星部さんに会いたいとおっしゃっています」
「私にですか?」
「社長のことで、とても大切な話だからと。どうしましょうか?」
「…では、秘書室に通して下さい」

私に?それも、北斗さんのことって、何だろう…
不安を抱えたまま、秘書室の前で待っていると、エレベータから降りて来た霞条様が、軽く会釈した。
「星部さん、お時間をいただいてありがとうございます」
「いえ…どうぞ」
中に案内し、ソファに向かい合って座った。

「早速ですが、単刀直入にお聞きします。北斗さんと付き合っていますね?」
「どうして…そんなことをお聞きになるのですか?」
「先日会った、私の妹を覚えていますよね?」
あの、綺麗な女性…
「はい」
「妹は、親同士がずっと小さい頃から決めていた、北斗さんの許婚なんですよ」
「えっ…許婚?」
「北斗さんの力のことは、知っていますか?」
「はい、知っています」
「力を持つ者は、子孫を残すため、そして、その力を悪用されないように、許嫁が決められます」
あまりのショックに声が出ない…

「妹は、世界に羽ばたく宇河HDの社長夫人に相応しい女性として、心も体も磨き上げ、教養も身につけてきました」
「私、何も知りませんでした…」
「賢い貴女のことです。北斗さんを愛しているなら、宇河家と霞条家の縁談が、将来、どれだけの相乗効果があるか、分かると思いましてね。それだけ言いたくて」
霞条様が立ち上がり、
「この話をしに来た事は、どうかご内密に。我々が仲違いすると、古くからの関係性にヒビが入り、経済界も揺れますから」
頭を下げて、ドアの前で止まった。

「私は、貴女を憎くて言っているわけじゃありません。貴女のためでもあるんです。苦しまないように。それだけは、分かってください。困ったことがあれば、私が力になります」
霞条様は、軽く頭を下げると、ドアを開けて出て行った。
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