前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
北斗さんへ

北斗さん、お帰りなさい。
突然の退職申し出で、北斗さんにも会社にもご迷惑をお掛けします。
どうかお許しください。
それと、会うと辛くなるので、手紙でお別れをすることも。
秘書にしてくださって、こんな私を愛してくださってありがとうございます。
北斗さんに刻まれた愛は、一生忘れません。

最後に、お願いがあります。
北斗さんはこれからのお幸せのために、そして私のために、決して捜さないでください。
私は幸せに暮らします。
これからの宇河HDのために、北斗さんがご活躍されることを、陰ながら応援しています。
くれぐれも、お身体に気を付けてください。
さようなら。綾奈より

綾奈…
俺の力に、やっぱり耐えれなかったのか…
俺が好きになったから…純粋な綾奈を傷つけてしまった。

でも、どうしようもなかった。
きっと、何度生まれ変わっても、俺は綾奈を選ぶ。
それほど、本能で綾奈に惹かれた。

力が抜けた俺は、封筒に入っていた鍵を持って、隣に向かった。
綺麗に片付いた部屋。運ぶ荷物も少なかっただろう。
給与も自分のために使わず、仕送りと貯金をしていると言っていた。
俺がプレゼントするからと、ブランド店に行くと、高い物はいらないと、街で見かけたお店で、仕事用のバッグが欲しいと買ってあげただけだ。

ニューヨークから戻って来たら、指輪を買う予定だったが…
「北斗様」
富田さんが、綾奈の部屋に入って来た。
「富田さん、この部屋はこのままにしてください」
「承知しました。星部さんをお捜ししましょうか?」
「いえ…本人の意向を受け入れます。俺の力が怖くなったなら、綾奈は俺を傷つけないようにと、会わずに去った…綾奈は…そういう子です」
「そうですね…」
「実家に連絡しても、きっと言わないように伝えているはずです。それを、無理に聞いても、綾奈を傷つける」
「承知しました。では、私はこれで失礼します」
「ありがとうございます」

ソファに腰掛け、綾奈と出会ってからのことを振り返る。
短い時間だったが、綾奈を愛したことも、真実を打ち明けたことも、後悔はしていない。
綾奈が選んだ道を、俺は責めることは出来ない。

でも綾奈…
俺は、君以外の女性は、愛せないんだよ。
そんな俺にして、去って行くなんて罪だろ…
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