前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
核心を突かれ、彼女の表情が引きつり、憎しみの黒が激しく渦巻く。
「そんな中、唯一、両親の気を引くことが出来たのは、私との縁談。そうですね?」
彼女は、目線を外した。
「私と一緒になれば、ご両親の視線が自分に向く。力は無くても、忠君より、立場は上になる」
「そ、それは…」
「私に嘘をついても、私の力を聞いている貴女なら、分かるでしょ?」
俺に全てを見透かされて、俯いて黙っていた。

「既に、両家の話はついている。それと、綾奈をこれ以上侮辱すれば、両家の仲がどうなろうと、霞条グループを飲み込みますよ」
「それだけは…そんなことしたら、両親に嫌われる」

両親に認められたい。
力を受け継がなくても、兄よりも自分は霞条家の繁栄に役立てると。
彼女は、ずっとそれに囚われている。
きっと、それはこれからもずっとだ。

「忠君は、兄として、その環境を理解し、会社の繁栄と共に、辛い思いをする貴女の幸せを願っていた。いつも傍にいて、その気持ちが汲み取れなかった貴女に、到底、私の妻は、務まらない」

これ以上は、話をしても同じだ。
次に、綾奈のことを悪く言えば、その時は…
「私は、綾奈を侮辱した貴女を許せない。これ以上、私を怒らせないように。もう貴女に会うことは無いでしょう。これは、通告です。お帰りください」
肩を落とした彼女は、
「今日の事は、両親にはどうぞご内密に、お願いします」
始めの勢いは無くなり、深々と頭を下げて、部屋を出て行った。

はぁ…
俺は、未だに綾奈のことになると、冷静になれない。
綾奈に…会いたい。
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