前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
電話を切った後、手が震える。
綾奈…何処にいるんだ…
自分への怒り。
嫌われても、どうして、綾奈を捜さなかったんだ。
今日まで、どれだけ不安で寂しい思いをしていたんだ、綾奈。

俺に黙って出て行ったのは…
俺の事が怖くなって、出て行ったのかと思っていたけど、そうじゃないのか?
身籠もって、俺に迷惑を掛けるかもしれないと思って、身を引いただけなんじゃ…

慌てて、綾奈の実家に電話した。
部屋を提供する時に、1度電話で挨拶をした。
付き合っている報告をする前に、別れたから、それっきりだった。

「ご無沙汰しています。宇河HDの宇河です」
「これは、いつもお世話になります、宇河社長!ようやく綾奈も、自分の力で、1人暮らしが出来るようになって。本当にありがとうございます」

いつも?
もしかして綾奈は、心配をかけないように、退職したことを話してないのか?
もしかして、妊娠のことも…
1人で産んだのか…

「会社から少し遠くなったけど、電車で2駅先だから、そう遠くないと言ってますし、遅刻しないようには言ってますから」
「えぇ、大丈夫ですよ。今度、色々お話したいので、伺います。それをお伝えしたくて」
「えぇ、お待ちしています」

辞めたことを言っていなければ、住所を聞くのも不自然だ。
綾奈が心配かけないようにと、黙っていたなら、尚更だ。
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