前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
【前世の約束、明かされる真実~北斗】
病院の外にある、大きな木の傍で待っている時、富田さんから電話が掛かって来た。
商談で何かあったか…取引が破談しても、今日はここから動くつもりはない。

「北斗様、星部さんには、お会い出来ましたか?」
「いえ…このまま会えるまで、外で待ちます」
「そうですか…こちらの事は、問題なく進んでいますので、ご安心ください」
「ありがとうございます」
「あと、先ほどの星部さんと痣の件をお聞きして、思い出した事があります」
「思い出したこと?」
「実は、以前、北斗様のお爺様、大旦那様がお亡くなりになる時に、古門書の整理を頼まれまして。とても興味があり、読ませていただいたのですが…その中に、北星様という北斗様と、同じ七色の目を持った方の、伝記を見つけたのです」
そして、富田さんは、その内容について静かに語り出した。

北星という祖先は、『癒しの女神』と評判高い大地主の娘と、結婚の約束をしたが、陰で既に貴族の娘との縁談が進んでいた。
2人で駆け落ちしようと、待ち合わせていたのを知られ、娘は遠くの町に隠された。
別れ際に、2人は来世で必ず結ばれようと約束をして…
北星は、苦渋の決断で一族を守るために、縁談の相手と結婚し、時が経ってから、どうしても別れた娘に、ひと目会いたくて捜した。

そして、風の噂を頼りに、辿り着いた時には、既にこの世を去っていた。
北星と別れてから、辿り着いた町で、娘は医者の妻となり、貧しい人にも献身に尽くして、評判通り、女神のようだったと皆、声を揃えて話をしていた。

妊娠しても、その姿勢を崩さなかった娘は、子供を出産した後、体調を崩し、そのままこの世を去った。
その娘の名前は、『星部 綾乃』という名前だと記されていた。
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