前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
それから一層強くなる雨の中、傘をさし待っていた。
綾奈と子供は、無事だろうか…

すると、病院からさっきの看護師さんが走って来た。
「あの、先ほどは失礼しました。星部さんがお会いすると言ってます」
会える…一瞬喜んだが、看護師さんの真剣な眼差しに、もう2度と来ないでと、言われる不安も同時に襲った。

俺の気持ちを察して、看護師さんは優しく微笑んだ。
「星部さん、メモを渡してから、ずっと泣いていました。雨の中、濡れて外で待っていることをお話したんです。星部さんの事を妻とおっしゃっていたとも」

看護師さんは、窓の方を見上げた後、俺を見た。
「星部さんは、私に泣きながら、愛する人なんですと教えてくれました。とても大切な人だと」
「…あの、妻と子供は…元気ですか?」
「奥様は普通分娩で、今のところ、問題ありません。お子様も元気で、明日から同室出来そうです。さぁ、ご案内します。どうぞ」

綾奈の言葉に、胸がいっぱいになる。
部屋に入ると、ベッドで横になっている綾奈が、涙を流していた。
「ごめんなさい…」
「謝るのは俺だろ?綾奈がどうして謝るんだ」
「勝手に、北斗さんとの子供を産んで…」
「1人で育てるつもりだったのか?」
綾奈は静かに頷いた。
「誰がお父さんかは、墓場まで持って行くつもりでした」
「急に出て行ったから、俺の事が怖くて、嫌いになったのかと思ったから、捜さなかったんだ」
「そんなこと…私は、別れてからもずっと、北斗さんを愛しています。でも相応しい家柄でも無ければ、教養もなくて…許婚の霞条様はお見かけしたことがありますが、北斗さんに相応しいから」
「聞いたのか…誰からだ?」
「どこで耳にしたのかは、忘れました。でも、子供が出来たことが分かって。産んではダメだと分かっていましたが、愛する北斗さんとの大切な子です。奪われたくなかった」
「そんなこと、俺がさせるわけないだろ?許婚も、とっくに解消している話だ」
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