前世の約束〜神の目を持つ敏腕社長は、純白オーラの秘書を慈しむ
話を聞くと、祖父母に心配を掛けないように、俺の会社を辞めた後、得意な英語を活かして、塾の先生や家庭教師、在宅ワークで収入を得ていたらしい。
大きなお腹を抱えて、きっと苦労しただろう。

俺は涙が止まらなかった。
涙を流すなんて、無い人生だったが…
綾奈の事になると、感情のコントロールが効かない。

綾奈を信じる事が出来なかった、自分への憤りで、拳を強く握りしめると、綾奈がそっと俺の手を握った。

「北斗さん…わがまま言っていいですか?」
「あぁ、何でも聞くよ」
「明日も来てくれますか?可愛い男の子なんですよ。3人で少しだけでも一緒にいたいです」
「もちろん、明日も必ず来るから」
俺が綾奈の頭を撫でると、安心と疲れからか、目を瞑った綾奈は眠っていた。

翌日は、昼から約束通り病院へ行き、綾奈のベットの横で眠っている小さな我が子に、言葉では言い表せない感情が、込み上がる。
父親になる事が、こんなに感動するとは、想像もしなかった。

「幸せになろう。この子はきっと、俺から引き継がれる力で、これから辛い思いをしていくと思う。一緒に支えていこう」
「引き継がれる…力?」

そうか…綾奈には、子供に引き継がれたら、俺の力が無くなることを、伝えていなかったんだ…
俺が説明すると、綾奈は不安そうな顔をした。

「そんな…すみません、私、知らなくて勝手な事を…」
「綾奈は何も悪くない」
「でも、北斗さんの力が無くなれば、大変な事に」
「力が無くなったら、俺が何も出来なくなると思うか?」
「いえ…それは…」
「俺は何も変わらない。社長としても、綾奈を愛する男としても」
「北斗さん…」
「俺達の子を、守ってくれてありがとう。産んでくれて、ありがとう」
涙を溜めて、頷く綾奈の手を握った。

「俺は家族を守り抜く。いいな、綾奈。俺の妻にするぞ」
綾奈の目尻から零れ落ちる涙を、手で拭った。
「嫌と言っても、綾奈の選択肢は1つだ。もう2度と離さない」
俺は綾奈の手を、両手で握り絞めた。
「何度でも言うよ。綾奈、愛してる。これからもずっと」
「宜しく…お願いします」
泣き笑いする綾奈のオーラは、もう見る事が出来ないが、一段と輝きを増しているだろう。
< 82 / 112 >

この作品をシェア

pagetop