国宝級オルガニストは初恋の彼女に甘く口づける
「君は頑張ってる、だからこそ苦しいんだ。これからも頑張りたいなら頑張ればいいし、嫌なら逃げてもいい。君が決めていいことなんだ」
言いながら、彼はペンダントを彼女の手に握らせる。
彼の体温が移ったそれを、律華はぎゅっと握りしめた。
「またここに来たら会える?」
「ごめん。オルガンの勉強でドイツに行くことになって、もうすぐ日本を出るんだ」
律華はさらに泣きそうに顔をゆがめた。
「学校をさぼった一番の原因は、実はそれ。ドイツでうまくやってけるのか不安で」
「逃げたらいいのに」
自分にはそう言ってくれたのに。
「逃げたくないんだ」
苦笑するように、彼は言った。
「あっちに行ったら上手い人がたくさんいて、俺なんか通用しないんじゃないかって思ってた。でも、君から拍手をもらえて勇気が出た」
律華は顔をくしゃくしゃにした。
「すごく感動したよ! 音がばーっとなって、きらきらして、それから……」
律華は必死でほめた。だが、知っている言葉が少ないから、きれいだの感動しただの、同じ言葉を繰り返すだけになってしまった。
それでも彼はうれしそうに笑みで顔を満たした。
「おい、弾きこみは?」
「父さん!」
男性の声がして、彼が答えた。
言いながら、彼はペンダントを彼女の手に握らせる。
彼の体温が移ったそれを、律華はぎゅっと握りしめた。
「またここに来たら会える?」
「ごめん。オルガンの勉強でドイツに行くことになって、もうすぐ日本を出るんだ」
律華はさらに泣きそうに顔をゆがめた。
「学校をさぼった一番の原因は、実はそれ。ドイツでうまくやってけるのか不安で」
「逃げたらいいのに」
自分にはそう言ってくれたのに。
「逃げたくないんだ」
苦笑するように、彼は言った。
「あっちに行ったら上手い人がたくさんいて、俺なんか通用しないんじゃないかって思ってた。でも、君から拍手をもらえて勇気が出た」
律華は顔をくしゃくしゃにした。
「すごく感動したよ! 音がばーっとなって、きらきらして、それから……」
律華は必死でほめた。だが、知っている言葉が少ないから、きれいだの感動しただの、同じ言葉を繰り返すだけになってしまった。
それでも彼はうれしそうに笑みで顔を満たした。
「おい、弾きこみは?」
「父さん!」
男性の声がして、彼が答えた。