国宝級オルガニストは初恋の彼女に甘く口づける
 いきなり下の名前で呼ばれて律華はうろたえた。
「連絡先、教えてくれる?」
「はい」
 答えて、スマホを取り出す。
 連絡先を交換すると、彼はまた笑みを咲かせた。

「ずっと君を忘れられなかった」
 熱のこもった言葉に、律華の顔が赤くなった。
 だが、彼は長く海外にいた。だからきっとハグもこんな言葉もただの挨拶だ。
 そう思うのに、心臓は落ち着いてくれない。

「これ、返さないとってずっと思ってて」
 律華がペンダントをはずそうとすると、奏鳴がそれを止めた。
「君にあげたんだから、君がもってて」
「でも……」
 言い淀んだ律華に、奏鳴は笑んでうなずく。

「大事にするね。ありがとう」
 結局、律華はお礼を言って手をひっこめた。
「このピアス、君のペンダントと同じグリーンアンバーなんだよ。見るたびに君を思い出していた。君がほめてくれたから、俺はがんばれたんだ」
 きらりと緑の石が光る。

「左耳のピアスは、守りたい存在があるっていう意味なんだ。つまり、君のことなんだけど」
 そうまで言われるとなんだか照れてしまう。
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