国宝級オルガニストは初恋の彼女に甘く口づける
「君は俺の初恋なんだ。再会した君はやっぱり素敵で、俺はもうすっかり律華さんが好きだ」
「またそんなこと言って」
 律華は苦笑した。
 内心はどきどきだった。

 が、どうせ酔った上での言葉だ。
 久しぶりにときめきをもらえた。だから、ときめきだけで終わらせなくちゃ。彼は輝く世界の人、自分とどうにかなるなんてありえないのだから。

「信じてないんだ」
 すねたように彼は口をとがらせる。
「キスしたら信じてくれる?」
「ダメよ」
 ジョークだと思って律華は笑って返す。

「笑わないで。俺、本気だよ」
「かなり酔ってるね」
「うん。君に酔ってる」
「またそんなくさいセリフを」
 律華は笑った。

「笑わないでったら」
 奏鳴は律華の腰を抱き寄せた。
 まっすぐに見つめられ、律華の心臓は鼓動を早くする。
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