国宝級オルガニストは初恋の彼女に甘く口づける
 ドアを乱暴に押して開け、ロビーに出る。
 と、待ち構えていたスタッフに囲まれた。
「夢藤様、確認したいことがございます。こちらへ」

「なによ、あんたたち!」
「蘭東さんがお呼びです」
 蕾羅は不機嫌に鼻に皺をよせ、仕方なくスタッフに連れられて楽屋へ向かった。

 しばらくして、奏鳴と律華が現れた。
「とんでもないことしてくれたね」
 奏鳴が蕾羅をにらむ。

「なんのことかしら」
「律華さんに会社をやめろと脅した。これは脅迫。オルガンのワイヤーを切ったのは器物損壊。コンサートの妨害は威力業務妨害にもなるかな? 彼女を閉じ込めたのは監禁」

「また彼女の虚言に騙されてるの?」
「認めないなら警察を呼ぶ。このペンチ、君の指紋が出たよ」
「そんなわけないじゃない! 手袋してたんだから!」
 彼女が言った直後、奏鳴はにやりと笑う。

「認めたね」
 蕾羅はぎりっと歯を噛み締めて奏鳴と律華をにらんだ。
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