国宝級オルガニストは初恋の彼女に甘く口づける
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律華は二人のやりとりをハラハラと見守っていた。
「認めたね」
奏鳴の言葉に、律華は顔を強張らせた。
「そもそもさあ。送風機室に閉じ込められた人を見つけたら被害者だって思うよ。どうして加害者だと判断されると思ったの? バカなの?」
バカって言った。
律華は驚いて彼を見る。そんなはっきり言うなんて。
「聞いてましたよね」
奏鳴が言うと、ドアを開けて老齢の男性が入って来た。
眼光が鋭く威厳が漂っている。
「お父様! どうしてここに!?」
蕾羅が叫ぶ。
彼はつかつかと寄ると、蕾羅の頬をはりとばした。
「迷惑をかけるなといつも言っているだろうが!」
「私はなにもしてません!」
「蘭東くん、今回は悪かったね。娘はもう手出しができないようにしておく」
「そうしてください」
奏鳴は感情を声に乗せずにそう言った。
「警察には言わないでもらえるね?」
「私が決めることではないので」
奏鳴の言葉に蕾羅の父はうなり、蕾羅の頬をまた殴った。
「行くぞ」
乱暴に蕾羅の腕を引っ張る。