国宝級オルガニストは初恋の彼女に甘く口づける
「やめてください、痛いです!」
 蕾羅の抗議を聞かず、蕾羅の父は手を引いて出て行った。
 それを見送り、律華は奏鳴の顔を見た。

「あの人のお父さんよね、いつの間に呼んだの?」
「社長をやってる伯父のつてで、コンサートが始まる前に。社長同士って、ネットワークがあるからさ」

「オーキッド楽器の社長の?」
「知ってたの? ていうか、調べたらすぐわかるか。隠してないし」
 奏鳴は苦笑した。

 律華は今さら気が付いた。
 世界的なオルガニストで大会社の社長の甥っ子。とんでもない人のプロポーズを受けてしまった。

「プロポーズ、今からキャンセルできないかな……」
「取り消しなんてさせない」
「そんなあ」
 困惑する律華を、奏鳴は抱きしめる。

「愛してる。もう絶対に離さない」
 甘く囁かれ、律華は陥落した。
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