国宝級オルガニストは初恋の彼女に甘く口づける
「ごめん、頭から存在が消えてた」
「ひどいな」
年配の男性が苦笑する。
「オルガンビルダーの松戸雄造さん。このオルガンを作った方の一人だよ。一生に一度しか受けられないオルガンマイスター試験の合格者でもあるんだ」
「大袈裟な紹介だなあ。初めまして」
お辞儀をされて、律華も慌ててお辞儀を返した。
「僕はお邪魔のようだから帰るよ。また聞きにくるね」
明るく言って、雄造は出て行った。
彼を見送ってから、奏鳴は律華に目を戻す。
「ペンダント、まだつけてくれてるんだね」
「これは私の宝物だから」
答えると、彼はまたうれしそうに笑った。
***
彼と出会ったのは小学4年生のころだった。
そのとき、律華は一部の女子からいじめを受けていた。
友達がいたから、耐えられた。
だが、日々続くいじめは、確実に精神を削っていく。
巻き添えを怖がったクラスメイトは律華を避けるようになった。それもまた彼女を傷付けた。
「ひどいな」
年配の男性が苦笑する。
「オルガンビルダーの松戸雄造さん。このオルガンを作った方の一人だよ。一生に一度しか受けられないオルガンマイスター試験の合格者でもあるんだ」
「大袈裟な紹介だなあ。初めまして」
お辞儀をされて、律華も慌ててお辞儀を返した。
「僕はお邪魔のようだから帰るよ。また聞きにくるね」
明るく言って、雄造は出て行った。
彼を見送ってから、奏鳴は律華に目を戻す。
「ペンダント、まだつけてくれてるんだね」
「これは私の宝物だから」
答えると、彼はまたうれしそうに笑った。
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彼と出会ったのは小学4年生のころだった。
そのとき、律華は一部の女子からいじめを受けていた。
友達がいたから、耐えられた。
だが、日々続くいじめは、確実に精神を削っていく。
巻き添えを怖がったクラスメイトは律華を避けるようになった。それもまた彼女を傷付けた。