国宝級オルガニストは初恋の彼女に甘く口づける
「ネットのデマを消して確実に君を手に入れるためには、あれが手っ取り早かったよ」
「もう……!」
 律華は軽く奏鳴の胸を叩いた。
 ふふ、と奏鳴は笑って律華の髪を撫で、その胸にあるペンダントに指をからめる。

「この石と違って、俺たちの人生は短い。少しでも長く君といたいんだ」
「私も……一緒にいたい」

 律華は彼との出会いを思い出す。
 いじめられて学校が嫌になって、それで彼と出会った。
 プロポーズをされて、マイナスがいっきにプラスにふりきった気分だ。

 なんという皮肉だろうと思う。幸せになる相手と出会ったきっかけが、律華に多大なマイナスをもたらした存在であったなんて。

 これからもきっと。
 律華は愛しさに目を細め、奏鳴を見つめる。

 これからも、たくさんのマイナスが自分にふりかかるだろう。プラスばかりの人生なんてありえない。逃げたくなることもたくさんあるだろう。

 だけど彼と一緒なら、きっとプラスに変えていける。
 短くて長い二人の時間を、幸せに塗り替えていける。
 彼の奏でる音楽のように、幸せに。

「ほんとのデザート……食べていいかな」
 言いざま、彼はまたキスをする。
 甘い夜を予感させる口づけに、律華はただ陶然と身を任せた。





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