先輩、雨は嫌いですか?
立ち上がった私が向かったのは、隣の北校舎三階にある図書室だ。

実を言うと、本を読むことはそこまで大好きって訳でもない。本とゲームが並んでたら、迷わずゲームを取る。

そんな私が、わざわざ図書室へ向かう理由は…。

カラカラ、と扉を開くと軽い音が鳴る。

適当な本を一冊選んで、席に座る。

斜め前の席に、いかにも難しそうな本を読んでいる男子生徒が目に入った。

そう。私が図書室に来る理由。それは、この人に会う…というか、この人のことを少しでも見ていたいからだった。

名前は雪野透(ゆきのとおる)。学年は上履きの色を見る感じ一つ上のニ年生。部活には所属しておらず、雨の日はほとんどこの図書室に来ている。

とまぁこの情報をなんとか自分で探り当てたのだ。一歩間違えればストーカー容疑でお縄に…となりかねない。

いや、でも!

それくらい、好きなのだ。きっと先輩は、私のことが分からないだろうけど、それでも。

先輩との(勝手な)出会いは二ヶ月ほど前の入学式。
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